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コラム

三浦大輔監督インタビュー
「悔しい思いを味わった全員で“横浜反撃”」

2022/03/21

 明らかに、変わった――。

 2月終盤から始まったオープン戦。ベイスターズが見せてきた戦いぶりには、昨シーズンとの違いがはっきりと出ていた。

 投手はストライク先行。打者はチーム打撃。走者となれば積極果敢に1つ先の塁を狙う。選手たちがその「意識」を常に持ち続けていたことが、動きや表情の端々から感じられた。

 就任2年目を迎える三浦大輔監督も、それを実感している。

 例に挙げたのは、3月16日、神宮球場でのスワローズ戦。4回の攻撃で戸柱恭孝がタイムリーを放った場面だ。

「ライト線に打って、ファーストをオーバーランしたところで止まったとき、ベンチから戸柱に向けて『セカンド行けたよ!』『行かんかい!』っていう声が自然と出てきたんです。それを聞いて『よし、いい感じになってきたな』と。コーチからではなく、選手からそういう声が出たことに大きな意味がある」

 昨シーズンは無念の最下位に沈み、チームの誰もが変化の必要性を痛感した。変化への挑戦は掛け声だけに終わることなく、春季キャンプでの徹底を経て着々と体現され、采配のバリエーションも増えてきた。

 指揮官はたしかな手ごたえを得ている。

「サインに応えてくれるというか、ベンチの意図をわかって選手たちが動いてくれる。試合に出ている選手だけではなく、ベンチにいる選手も準備ができているのが大きい。コーチ陣がキャンプからしっかりと取り組んできた成果でもあるし、それに応えようとする選手たちのがんばりだと思います」

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遊撃手を誰に託すか。

 オープン戦を通じて順位表の上位層に位置し続けたこともあり、変貌を遂げたベイスターズの躍進に期待感は募る。ただ、もちろん、不安材料がないわけではない。

 気がかりの一つは、桑原将志の状態だ。昨シーズン、打率.310の好成績でリードオフマンの役を担ったが、オープン戦ではなかなかヒットが生まれなかった。

 三浦大輔監督は言う。

「問題ないと見ています。尚典さん(鈴木尚典一軍打撃コーチ)に『桑原はどうですか』と聞いたときも『問題ない』と。いまの状態が開幕してから1カ月も続くようなら考えますけど、打席の内容は非常にいいですし、心配はしていません」

 開幕を間近に控え、布陣の構想はおおむね固まっているが、いくつかのポジションに関してはギリギリまで悩まされている。

 遊撃手を誰に託すかは、その一つ。3年目の森敬斗が故障離脱したが、それでも競争は白熱している。

「森はキャンプから状態がよくて、結果も出しつつあるところでのケガ。本人はすごく残念だと思うし、チームにとっても大きなダメージです。ただ、ほかの選手たちにとってはチャンス。特に知野(直人)がね、このチャンスを絶対に離さないんだって必死になっているのはすごく伝わってきますよ。柴田(竜拓)も『いやいや、おれもいるぞ』と守備でもバッティングでも貢献してくれています。ベテランの大和もバッティングは絶好調で、倉本(寿彦)もいて……。世代の違うメンバーで争っている。だから悩んでます」

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 捕手の座をめぐる競争にも決着はついていない。守備の要の起用方針について、三浦監督は言う。

「昔は全試合スタメンマスクをかぶるようなレギュラーキャッチャーがいましたが、時代とともに変わってきている。いまのベイスターズのメンバーで考えると、固定はしません。打撃の状態の良し悪しもありますけど、やっぱり守りのほう、バッテリーとしてどれだけ失点を防げるかを重点的に考えて、そのときの状況に合わせて起用していきます。このピッチャーにはこのキャッチャー、という固定の仕方もしないですね。同じ配球のパターンで1年間戦えるわけでもないので、いろいろな組み合わせの選択肢を持ちながら143試合戦いたい」

経験者だけが知る、開幕投手の難しさ。

 2022年のペナントレースは、3月25日、カープとの一戦で幕を開ける。その日、横浜スタジアムのマウンドに立つ開幕投手は東克樹に決まった。

 2020年2月にトミー・ジョン手術を受けた東は、昨シーズン終盤に復帰。先発した3試合でいずれも好投し、1勝を挙げた。再スタートを切ったばかりの左腕に開幕投手を託したのはなぜか。三浦監督が語る。

「2月の段階から(東を開幕投手にする)イメージはありましたよ。復帰してからの登板数が少ないことはまったく気にならなかった。ルーキーの年にしっかり投げていますし、長いリハビリの経験で、人間としても、プロ野球選手としてもひと回りもふた回りも大きく成長したなと感じています。キャンプ中、ブルペンでの投球を見ていても、回復具合に問題はない。東で2022年のスタートを切ろうという思いは徐々に固まっていきました。ピッチングコーチと話をしたときも、気持ちは同じでしたね」

 三浦監督自身、現役時代には7度の開幕投手を経験した。「やった者にしかわからない」難しさがあるという。

「初球には気をつけろよって、アドバイスできるのはそれくらいかな(笑)。本当に独特の空気感があるんです。投手だけではなく、野手、スタッフ、相手チーム、ファンの方、審判もそう。いよいよ始まるぞ、というね。そのなかで(1回表に)試合の1球目を投げるのは、日本で6人しかいない。名誉なことだし、緊張もする。東には思いきってやってほしいですね」

 東から始まる開幕ローテーション。その枠の争いも最後までもつれた。オープン戦が残りわずかとなった段階で「あと2枠を3人で争っている」と、三浦監督は内幕を明かす。

 昨シーズンの終盤から「白紙」となってきた抑えについては、これまでの起用からわかるとおり、山﨑康晃と三嶋一輝の2人が候補。「どちらもいい状態で仕上げてきてくれている。いい悩み」と話し、いよいよ最終決断を下す。

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「加速した状態で開幕を迎えないと」

 オープン戦の結果はあくまで参考材料に過ぎない。それでも、悪くない戦績を残せたことはポジティブに受け止めていい。

 三浦監督は言う。

「『今年のベイスターズは変わったな』というところを練習試合の段階から見せていこう。沖縄でのキャンプ中、選手やコーチにはそう伝えました。第一印象は大事だし、『去年と変わってないな』と思われると、それだけでナメられてしまいますから。去年は開幕でつまずいたことがずっと響いてしまったわけで、それを考えると、3月25日に『よーい、ドン』じゃダメだと思うんです。最下位から巻き返すためには、オープン戦から勢いをつけて、加速した状態で開幕を迎えないと。フライング気味にでも行かなきゃいけない」

 今年は横浜スタジアムで開幕戦を迎えられる。それもまた、チームにとって大きな後押しになる。

「現状の方針では入場制限なしですから、感染予防に気をつけていただきつつも、たくさんのファンの方に見に来てもらえて、力を与えてもらえる。そのなかでスタートを切れることには非常に大きな意味があります。昨シーズン、“横浜一心”のスローガンのもとで戦い、ファンも含めて全員が悔しい思いを味わいました。今シーズンはその全員で“横浜反撃”を実現したい」

 昨年、横浜スタジアムでの最終戦で、最下位が確定した。その試合後、対戦相手だったスワローズの胴上げを目にした。

 悔しさを飲み込んだ本拠地から、今年の戦いは始まる。

 長いペナントレースの始まりに際し、指揮官は選手たちに、こんな言葉をかけるつもりだ。

「1年間、どんなときでも、全力でやれよ。全開バリバリでいこうよ。反撃する。その気持ちを貫き通そう」

 頂点だけを目指す逆襲のエンジンに、すでに火は入っている。

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