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INTERVIEW

2018-06-07進化を止めない、ハマの大砲。




2018年5月24日、夜空に溶けた白球は横浜スタジアムの右翼席に吸い込まれた。
長距離砲との期待を背負ってドラフト1位で入団してから9年目。
26歳5カ月での通算150号到達は、球団史上最年少のスピード記録だ。
己を信じ進化を続けるハマの主砲が、ひと振りに懸ける思いを語った。


150本のホームランの中に存在する
「すぐにでも忘れたいホームラン」。

――プロ通算150号ホームラン、おめでとうございます。振り返れば、ルーキーイヤーの2010年10月7日、阪神の久保田智之投手から放ったプロ初安打が第1号でした。「ここからプロ野球人生が始まるんだ」という感慨があったのではないですか?

筒香 そういう思いは特にありませんでしたね。(1年目は)一軍で出たのは最後の3試合だけですから、がむしゃらというか、あの頃はとにかく「ただ打ちたい」という気持ちしかなかったと思います。




――18歳でプロ入りした当時から、周囲からは常にホームランを期待されていたと思います。そういう声をどう受け止めていたのでしょうか。

筒香 もちろん期待されるのはありがたいことですけど、そこは特に意識しないようにしました。ぼくは負け試合でホームランを打っても価値がないと思っていますし、自分としてもまったく喜ばしいものではありません。それよりは、チームが勝利に近づくために打点を稼げるバッターになりたい。だからホームランへのこだわりは……正直あんまりないんです。




――とはいえ、150本の中には勝負を決定づけた一発もたくさんありました。ご自身にとって印象的なホームランはありますか。

筒香 うーん……記憶を毎年リセットするようにしているので…ないですね(笑)。150本に到達するまではいろんな打席がありましたけど、これがベスト3だっていうような感覚はないかな。現役が終わった後でなら答えられるようになるかもしれません。




――2016年7月22日の巨人戦、史上初の3試合連続マルチ本塁打の記録をつくった一本はすごく印象的でした。同点の延長12回裏に飛び出した、劇的なサヨナラ本塁打だったと思います。

筒香 実を言うと、あの一本は自分のバッティングの形という意味では、すぐにでも忘れたいホームランだったんです。もちろんチームの勝利に貢献できたことは嬉しかったのですが、自分の中で残したくない感覚というか。

――すぐにでも忘れたいホームランですか……。筒香選手らしい表現ですね。150本の中には、残しておくべき感覚のものと、残したくない感覚のものがあるんですね。

筒香 はい、その両方があります。

――今シーズン、残しておきたい感覚のホームランはありましたか。

筒香 まだないですね。今シーズンに限らず「うわ、いまのホームラン(打ち方としては)最悪だな」というものはたくさんあるんですけど、「この感覚を残しておきたい」と思えるものは少ないです。




――ホームランを狙って打席に立つことはめったにないそうですが、たとえば最終回、ここで一発が出ればサヨナラ勝ちが決まるという場面ではどうなのでしょうか。

筒香 うーん。一概にイエスとは言えないですね。「ここはホームランを狙っていい場面だ」という言われ方をよくしますけど、そういう(点差などの)状況的なものだけではなくて、相手チームがどこで、ピッチャーは誰か、キャッチャーは誰か、どういう攻め方をしてくるのか、そういうことのすべてを考慮に入れる必要があると思います。その兼ね合いの中で失投が来る可能性があると思えるのなら失投を待ちますし、まず失投は来ないだろうという状況ならいくらホームランを狙っていても打てる確率は低くなります。狙うかどうかは、そのすべての要素を含めての判断ですね。




シーズン途中の打撃フォームの変化。
「感覚が合う時を待つのではなく、自分から変えにいった」

――今シーズンの開幕前、「心と体の充実。そこの一致が去年とは全然違う」というお話をされていましたが、実際に試合を重ねていく中で、打率がなかなか上がっていかない状況が続きました。その要因について、ご自身ではどう考えていましたか。

筒香 打てないのはぼくの技術不足、それだけの話だと思います。「ここがこうなっているから」とか、そういう言い訳はしたくありません。自分が下手くそなだけ、そう捉えるようにしていました。

――5月15~17日の甲子園での阪神戦では、打席で苛立つような表情も見受けられました。ところが次カードの東京ドームでの巨人戦からホームランを連発します。明らかな変化がありましたね。

筒香 はい、変わりました。

――いったい何があったのでしょうか。

筒香 開幕した時から、たしかに感覚はあまりよくなかったです。でも、変わるための準備はずっとしてきていたんです。

――試行錯誤した結果、パチンと合う時が来た。そんな感覚ですか。

筒香 今年に関して言うと、感覚が合う時を待つのではなくて、自分で変えにいったという感じですね。「これなら絶対にいける」という感覚があって、そこに変えにいきました。ただ、変えたいと思って変えにいっても、いつでも急に変われるというものではありません。それは自分でもよくわかっているので、そのための準備をずっとやってきて、整ったと感じたので自分から変えにいきました。もちろん去年のオフからもそうですし、5年前から続いていることもあります。「これをやったから変わった」と、簡単に口で説明できるようなことではないです。




――その結果として、打席での構え方がオープンスタンスになったんですね。

筒香 外見上はそこに目が行くのはわかります。でも、スタンスを変えた、ということだけで表現できるシンプルな変化ではありません。

――「44本塁打をマークした2016年のフォームに戻った」という見方をする人もいるようですが。

筒香 自分の中では、そういう感覚は全くありません。バットの出方、ステップの位置など、細かく見ると、様々なところが2016年とは異なります。

――巨人戦以降、バッティングの調子はかなりよくなったかと思いますが、筒香選手は好調な時に、その状態を維持しようと何かしたりしますか。

筒香 それはまったくないです。




――どんなにいい状態にあってもなお進化を求める?

筒香 もちろんです。だから、ぼくにはルーティンもまったくありません。

――好調な状態から進化を求めるというのは同時にリスクもありますよね。

筒香 もちろんあると思います。でも、ぼくの場合は、思いつきでパッと何か新しいものを取り入れることはありません。「こうなった時にはこの対処法」「それでもこうなってしまったら、こうしよう」「それがダメならこの対処法」といったように何パターンも何パターンもイメージして、考え抜いたうえで取り組むようにしています。そこまで考えてやったことなら、マイナスに働くなんてことはまったくと言っていいくらいないですね。




全力で勝負してくれた相手投手、周囲のサポート。
一人では達成できなかった記録だから「通過点」という表現はしっくりこない。

――5月24日、横浜スタジアムで150号を打った試合後、「通過点という言い方はしっくりこない」というコメントがありましたが、その言葉の真意は?

筒香 「通過点」と言ってしまうと、いままで対戦してきた投手に対する敬意がないように感じたからです。これまでの対戦で、相手が全力で投げてきて、ぼくが打ち取られ、そこから学ぶことがたくさんあって、いまこうやってたまたま150本のホームランを打つことができた。だから「まだまだ通過点です」というような軽い気持ちはまったくありませんでした。もう一つは、ぼく一人では決して達成できなかった記録だからという思いが大きいですね。周りの方々のサポートがあって、いろんな人が関わってくれて達成できたことなので。それを「通過点」と言ってしまうのは、ちょっと失礼というか、敬意や感謝の気持ちが足りないのかなと思います。




――開幕から2カ月が経過しました。開幕前のインタビューでは、自分の外、チームのほうに矢印を向けることが大切だと話していましたが、今年のチームはそれができているという実感がありますか?

筒香 もちろん、自分も含めて、まだ足りないと感じることはあります。でも、今まで「もっとチームのことを考えてほしいな」と思っていた選手が、チームのことを考えるのが当たり前になってきている状態があります。そういう選手が出てきているという変化がこのチームにはあると思います。

――筒香選手自身は、悲願のリーグ優勝に向けて、どんな活躍をしていきたいと考えていますか。

筒香 ぼくの理想は、打点を挙げるべき時に打点を挙げられるバッターです。仮に50本のホームランを打ったとしても、そのうちの40本が負け試合で出たものではあまり価値がない。それよりは年間5本塁打でもいいから、勝利に貢献するホームランを打つほうが価値があると考えています。これからも“チームの勝利につながる一打”にこだわっていきたいと思っています。