戻る

FOR REAL-in progress-
優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。
“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」

2018-10-15静かな秋を経て踏み出す、新たな一歩 -67勝74敗2分、セ・リーグ4位。




 10月9日、18時00分。

 時を同じくして、それぞれの未来を懸けた試合が始まった。

 神宮ではベイスターズがスワローズと戦った。
 甲子園ではジャイアンツがタイガースと戦った。

400km先の勝敗が気にならないと言えばウソになる。だが、自分たちにできることだけに集中する。それが、ベイスターズに属するすべての者に一致した思いだった。

 重要な一戦の先発マウンドを託された平良拳太郎は、今シーズン、ずいぶんたくましくなった。強打者の外角を丁寧に狙いながら、心を決めてインコースに切り込む。慎重さと大胆さを両手に携え、沖縄の兄貴分、嶺井博希のリードに応えた。

 4回表、相手先発の館山昌平が制球を乱す。J.ロペスの四球に始まり、佐野恵太と桑原将志の連打でノーアウト満塁。柴田竜拓が冷静に見極めて押し出しの四球で先制点を奪うと、2アウトとなってから嶺井の二塁打で2点を追加した。

 5回には、N.ソトが第41号ソロを右中間スタンドに放り込む。加入1年目でのホームラン王を確定的なものにした。

 4回2/3を無失点でしのいだ平良の後を、三上朋也、砂田毅樹、三嶋一輝、S.パットン、山﨑康晃が力強くリレーする。4-1。勝った。


しかし、ハイタッチを交わす選手、監督、コーチたちに笑みはない。一足早く、甲子園でのゲームは閉じていた。ジャイアンツが勝利。ジャイアンツの3位が確定。CSに行くのは、ベイスターズではなく、ジャイアンツ――。


 神宮球場の人工芝の上を、レフトスタンドのほうに向かって歩いていく。一列に並び、最後まで声援を送ってくれたファンに向かって謝意を示す。先頭に立ったA.ラミレス監督は帽子を取り、深々と頭を下げた。



 遡ること2日。10月7日の広島で、指揮官の本気を見た。

 カープに4-3と競り勝った試合後の囲み取材での一幕だ。最後、ある記者が質問を投げかける。

「あと2試合を残している段階ですが、来シーズンも続投という記事が出ました。それについて――」

 問われた44歳が表情を硬くしたのがわかった。記者のほうに体を向け、一直線の視線で射て、半歩ほど距離を縮める。場の空気が緊張する。一言、言った。


「その答えは、あなたがいま言った質問の中にある」


 数秒前の記憶を呼び戻し、記者がつぶやく。

「あと、2試合ある」

 口を真一文字に結び、うなずいてから、背番号80は遠ざかった。


ミス。失敗。挫折。ケガ。苦悩。全てを成長の糧に。



 周囲の雑音をシャットアウトし、わずかな望みに懸けた最終2連戦は1勝1敗で終わった。

 10月10日、今シーズンの打ち止めとなる143試合目のゲームセットを迎えた甲子園で、ラミレス監督は南場智子オーナーらと会談を持ち、来シーズンの続投要請を受諾した。

67勝74敗2分、セ・リーグ4位。就任後初めてのCS圏外。

 そんな現実を前にして、反省の言葉はあふれる。

「監督としてチームを1つにして、そして目標を達成することができなかった」
「自分の考え方や試合へのアプローチを変えなければいけない」
「コーチ陣と私のコミュニケーション不足があったのかなと思う。彼らの能力をなかなか発揮させてあげられなかったと強く責任を感じている」

 たびたび口にしたのは「責任」そして「変化」の言葉。勝ち負けに関わる責を負う監督として、この1年間をどう総括し、次の1年間に向けてどう変わるのか。南場オーナーが語ったように「3位、3位ときて4位。大きなジャンプの前にしゃがんでいるという形」にできるか否か。



 一昨年、昨年よりも早く訪れたシーズンオフ。指揮官の頭が休まる暇はない。

 翌11日には、光山英和バッテリーコーチ、小川博文打撃コーチの退団が発表された。

 以前、小川がこう言っていたのを思い返す。話題が打線のつながりに及んだ時のことだ。

「選手は何とか打とうと、そういう気持ちでバッターボックスに行ってる。そこのところはね……おれが悪いんだよ。選手は一生懸命やってるんだから、打てなかったらバッティングコーチのせい。そのくらいの覚悟がなかったら、この世界ではやっていけないんだ」

 桑原やロペスら、時に不振に陥った打者たちに付き添い、快打の感触を取り戻させようと尽力した小川。捕手たちの成長を誰より願い、支え続けた光山。彼らの志を、選手たちは来シーズン、目に見える形で示さなければならない。

ミス。失敗。挫折。ケガ。苦悩。

 成長の糧とすべきものは山ほどある。ヒントは過去にある。悔いる時間もある。

 ただ見つめるべきは、未来だ。未来のために新たな一歩を踏み出すべきだ。
 ラミレス監督は、最後にこう言った。

「毎日毎日、いろんなことを人間は学べる。それが学びのプロセスだと思う。ミスや失敗から学び、自分自身をしっかり修正したい」

 静かな秋。次なる年を実りあるものとするための準備の時間は、もう始まっている。