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FOR REAL-in progress-
優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。
“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」

2017.4.17戸柱恭孝、勝利への献身


 タイガース戦に2連敗の後、スワローズには勝ち、負け、勝ち。

 ここまで14試合を終えて5勝8敗1分のベイスターズは、一進一退を繰り返しながら奮闘している。

 その中でつかんだ先週の2つの勝利は、それぞれに意味合いの異なるものだった。

 4月14日、スタメンに梶谷隆幸の名前がない。試合前に右太ももの違和感を訴え、今シーズン初の欠場。さらに9回には、いったんは守備についた筒香喜智が梶谷と同じく右太ももに異変を感じ、ベンチに下がった。

 外野の両翼を守る主力2人の不在という緊急事態を救ったのは、途中出場の関根大気だった。


 延長10回裏の先頭打者として打席に入ると、セーフティバントを決めて出塁。暴投とボークで三塁まで進み、白崎浩之の打球に合わせてギャンブルスタートを切って、みごとな身のこなしでサヨナラのホームに滑り込んだ。

 持ち味を生かしてヒーローとなった21歳だが、反省を忘れない。

「スタートについては、上田さん(外野守備走塁コーチ)からも『問題なかったよ』ということは言われました。でも、まだまだ。あの(本塁でギリギリの)タイミングになってしまったので、ホームに向けての意識をもう少し強くしてもよかったのかなって」

 オープン戦では42打数20安打と5割近い打率をマークしながら、開幕後の出番は決して多くない。並みの若者なら「これだけアピールしてもダメなのか」と思いそうなものだが、関根が矛先を向けるのはあくまで自分自身だ。

「それは3年間、ぼくが積み上げてきたものが足りなかったということ。もしオープン戦で7割打てていたらスタメンで使ってもらえていたかもしれない。あと2割、3割が打てなかった実力のなさを感じましたし、開幕してからも9打席もらって2本しかヒットが打てていないわけで。これが9本打てていたら、また違う状況になっていると思いますし……」

 外野陣のバックアップには、乙坂智、15日に昇格した荒波翔、さらにルーキーの佐野恵太も加わって、A.ラミレス監督の言う「第4の外野手」というポジションでさえ競争は熾烈だ。

一軍に残れているし、チャンスはある。自分ができる最高の準備をして、悔いのない一日にしたい

 どこまでも野球にまっすぐな背番号63は、口を真一文字に結んだ。

 サヨナラでの今季4勝目はたしかに劇的ではあったが、9回に追いつかれるという苦しさの裏返しでもあった。

勝った試合の後でも苦虫を嚙みつぶしたような顔をしてますね

 チーム関係者がそう表現するのは、捕手の戸柱恭孝のことだ。



 ブルペンの不調、先発の序盤での失点。各々の投手が分散して抱えてきた痛みの総和を、ほぼ一人で引き受けてきた。

 戸柱は言う。

キャッチャーにしかわからないことっていうのは絶対にありますから。勝っても『よっしゃー!』とはならないですね。『はあっ』というため息がまずは出ますし、1時間ぐらいはぼぉーっとしてしまう。それだけ切羽詰まってますよ、毎日」

 新人ながら正捕手を務めた昨シーズンを経て、“一度通った道”を歩む2年目。戸柱はいま、どんな光景を見つめながら歩を進めているのだろうか。

「去年1年間まるまるやって、怖さを知りました。プロ野球では1球で流れが変わってしまうし、勝ち負けを左右する。ここだっていうポイントをすごく感じるようになりました」

 その勝負どころで、攻めのリードをするべきか。あるいは、かわすリードをするべきか。配球は常に結果論であり、正解はない。それでも答えを出さねばならないのがキャッチャーの仕事だ。

 たとえば開幕戦の7回1死満塁、進藤拓也が痛打された初球。

 たとえば開幕3戦目の10回1死満塁、須田幸太が本塁打された初球。

 いずれも、1球の怖さをあらためて思い知らされた瞬間だった。

「ピッチャーが最も自信のあるボールを選ぶのか。バッターの弱点であるボールを選ぶのか。そこはすごく迷います。その日のピッチャーの状態にもよりますし、最初の投球練習を受ける中で感じないといけない部分もある。攻めるか引くかの見極めを、もっと早くできるようにならないといけないなと思ってます」

 16日、今季初のカード勝ち越しを決めた勝利には、戸柱も頬をいくぶん緩めたことだろう。

 4回に先発のP.クラインが適時打を放ち、自らを援護。その時、二塁上には自分のことのように手を叩いて喜ぶ背番号10の姿があった。2点差に追い上げられた7回には、2死満塁から戸柱のヒットでとどめを刺した。

 快勝のゲームセットから約3時間。駐車場に姿を見せた戸柱は、やはり明るかった。

「(自身のタイムリーは)久々にゴウ(筒香嘉智)にヒットが出て、ザキさん(宮﨑敏郎)、トシ(倉本寿彦)とつないでくれた。チームのつながりを考えて食らいついた結果です。(クラインのタイムリーは)初ヒットで2打点で、逆転ですからね。それをピッチャーがやってくれて、キャッチャーとしてうれしかった」

 車に乗り込みながら、一言、こうこぼした。

救われました……

 この試合で明らかになったブルペンの配置転換など、女房役の頭が休まる暇はない。それでも、勝利の爽快感だけが疲れを癒してくれる。

 結果を出し続けなければならない若者の果敢さがもたらした薄氷の1勝と、“怖さ”に向き合う捕手を笑顔にさせた会心の1勝。

 彩りの異なる2勝を糧に、明日からは首位カープとの敵地3連戦に挑む。昨シーズンのCSファイナルステージで辛酸をなめさせられた相手に勝ち、一進一退の現状から、たしかな前進の一歩を踏み出したい。